翌15日土曜日、カン太を病院に引き取りに行く。檻から出ると、サウジへ出発の前の日、ホテルに着いてケージから出したときと同じように鼻をこすりつけてくる。あの時よりも力が強くてものすごい。かわいそうだ。家に帰って風呂に入れる。病院でウンチを我慢していたのだろう、下痢をする。
翌16日、シャワーの出が弱いので、高圧にする工事を頼んでいたが、フィリピン人のワーカーが「屋上に設置するポンプは3000リアルするが、本来設置されているはずのものがそうなっていないとおれが報告すれば只になる」と言う。どうも真意がわからない、差額のいくらかをよこせというのかと思い、金が欲しいのかと聞くが、そうではないと言う。まあいいや、只でやってと頼む。
翌17日、車の月賦は毎月2000リアルで、生活費が足りず、妻の決断で財形をおろしちまえと本社に電話して引き下ろしを依頼する。
翌18日朝、妻がずっと我慢していることを押し殺しながら「1年で帰る」と言う。やっぱりまだいやなのだ。この日、シャワーの高圧化工事がやっと出来る。3000リアルが只になった理由は、ワーカーさんが人を喜ばせたいから。わたしが子どもの時、ババ抜きみたいなトランプを姉たちとやっていて、姉を勝たせたくて「何が欲しい?」と何度も言ったものだ。本来のトランプではないが、好きな人を喜ばせたくてのことで、彼もおんなじだ。しかしもうひとつ理由がある。黙って只にしてくれればそれでいいのに、「おれが口を利いたら只になる」と言いたいのだ。人に認められたい子どもの心だ。
21日金曜日、学校の学習発表会。美術の先生が「この学校の子ども達は声がよく出ます」と小人数教育のメリットを話す。「来年は人数が減って、このような形での発表会は実施が危ぶまれます」とも言う。午後はプール、昼寝、かんちゃん散歩。日記が書きにくいので、ワープロと組み合わせた別バージョンの日記を作る。ピアノの電池を交換する。小学校で大活躍した2家族が帰国するので、そのパーティに夜ムラブスタンに出掛ける。生徒が4人も減ってしまう。奥さん共々活発な家族で、学習発表会の自分の子供の演技に元気をもらったとあいさつ。床に書いた2人立つのがやっとのサークルの中に夫婦で入って、出ては行けないというルールで、2人していちゃいちゃ、生きているのが楽しくて仕方がないという日本の一流企業のサラリーマンだ。