切符を買い、またスパゲティを食べてアルジェンティナというところで降りると、小さな画廊のようなところでマリアカラス展というのをやっていたので、妻子を外で待たせて中に入る。舞台で使われた衣装等が展示してある。すぐに外に出て、トリトーネ通りを歩いていると、再び後ろで妻の叫び声。またスリだ。こんどはちゃきちゃきのローマっ子。両腕をつかまえて建物の壁に押しつける。けしからんという表情でにらむのだが、そんなに腹が立ってるわけではないので、すぐに放してしまう。妻はスリをたたく。あの箱入り娘の自然児が! スリも自然児だが、ずいぶん違うよな。

ジノリを探しているのだが、一軒目は休み、スペイン階段上の店を目指して歩き、別の店があったので入るがだめ、階段上もだめ、オペラは夜なのでホテルに戻って妻子は昼寝させ、ホテルそばの大きな公園を見に出かける。また帰りの道がわからなくなり、二つ目の駅フラミニオまで来てしまった。地下鉄で戻り、7時半おとといの日本食屋で晩ごはんを食べ、もう時間がないのでタクシーでスタジオオリンピコに駆けつける。タクシーを降りて入場口目指して歩く。トスカの漫画本を売っている。歌手も何も知らず、プログラムも買わず、ただ聞く。競技場では音が響くのだろうかと心配していたが、ちゃんと響いている。ホセカレーラスのCDで聞き慣れた歌が始まる。あ〜これか。1幕の終わり、教会の偉い人たちが行進してくるが、頭にとんがり帽子のようなものをかぶっていて、おどろおどろしい。宗教というのはみな同じようなものだ。2幕はひたすら赤いコスチュームのトスカに見入り、聞き入る。3幕、有名な星も光りぬがろうろうと歌われる。聴衆は万雷の拍手。この曲はあまりにポピュラーであまり好きでないのだが、いやすごい。テノールはひたすら胸に手を当てて謝意を表している。拍手とブラーボが鳴りやまない。頃合いを指揮者が見計らって動く。アンコールだ。日本で聞くアンコールはお互いに儀礼的なところがあるが、これがほんとのアンコールだ。再びろうろうと数分間が過ぎ、再び万雷の拍手。テノールは「わたしはこれを歌いました。みなさんが良かったと思ってくれるのならありがとうございます。」というのを体で表している。すなわち胸に手を当てて頭を前方に少し落として身じろぎをしない。お愛想は全くない。西洋人というのは歌手と聴衆の双方に甘えが全くないのだ。一度目と同じくらい拍手とブラーボが続き、再び指揮者が頃合いを計ってオーケストラが鳴り始める。そのとき「ブラーボ!」と間抜けな声。聴衆が「しー!」とソットボーチェでたしなめる。すごい。

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