機内に入る。スチュワーデスはエジプトの壁画にあるような青い服を着て、ズボンをはいている。スカーフを巻いているが、顔は出しており、ふつうにサービスをしている。身構えねばならないような話ばかりを聞かされてきたので不思議な感じがする。念のためビールを注文してみると、やはりない。やっぱりだめかとあきらめて、ノンアルコールビールならあるというので、じゃあと飲む。みてくれはビールと変わらない。のど越しも変わらない。当座のしのぎにはなりそうだ。あとはビジネスマンよろしくまたサウジの本を読んで、寝て、夜11時35分予定通りジェッダに到着。楽しみはあるのだが、いよいよだという気持ちをおさえて平静を保つのに力がいる。ドアがあいてバスに乗り込む。なるべく出口に近いところに立つ。バスは客席が昇降式となっていて、う〜う〜う〜と重々しい音をたてて地面の位置まで下がり、走り始める。白いずんどうの寝間着みたいなアラビア服に、赤と白が交互にちりめんじゃこのように織り込まれたスカーフを頭にまとったサウジ人だらけのなかに日本人はひとりだけだ。すごいなあと思いつつターミナルへ到着。イミグレーションとカスタムの通過が大変だと聞かされていたので、早足でイミグレーションにむかう。イミグレーションは白い石造り基調で、カウンター等の構造物は濃いこげ茶色をしていて一見いい色だなと思うが、見ていると重苦しく感じてくる。裸にタオルのようなものを巻いただけの人たちが順番を待っている。すごいなあ、アフリカではタオルだけで生活できるんだと思う。行列は20人弱くらいで1時間ほどで入国。カスタムへむかうとさっそく荷物運びが寄ってくる。運んでもらう荷物などないよと首をふり、荷物を探す。布製のボストンバッグが何度も放り投げられたのだろう、真っ黒になって出てくる。荷物チェックはあやしいものなどあるわけもなく通過。外に出る。出迎えが見当たらない。1分ほどしてミスター磯部?とずんぐりで丸顔のおやじが声をかけてきて、そのうしろにジェッダの同僚が立っている。ずんぐりのおやじはフィリピン人の運転手だ。運転手はボストンバッグを当然の顔つきで持つ。出口へ向かう。運転手は車を取りに駐車場に向かい、5分ほど待つ。車がくる。ひとり1台とぜいたくだ。同僚はレクサス、我が車はクラウンだ。走り始めて静かなのに驚く。レガシーと違うね。ファーストタイム? と運転手が聞いてくる。あー、ファーストタイムに決まってるというニュアンスを言うことは出来ず、ファーストタイムと答える。