居住許可証のイカマがないと何も始まらないので、夕方、取得用の健康診断を受けに行く。事務所でモハメッドというインドネシア人を雇っていて、彼に病院へつれていってもらう。いきあたりばったりで2つ3つ病院にいくが、なぜかやってもらえない。事務所にもどってスポンサーの人事部のゴリラのようなおっさんがバグシャンという病院に電話してOKだという。彼の奥さんがそこの看護婦長をしているそうだ。病院に行ってみると、看護婦長は白のスカーフをした目鼻立ちの整った大柄な美人で、はきだめに鶴だ。ゴリラさんには不釣り合いだ。受付の横のテーブルに男がひとりすわっていて、そこに書類を出すと、白いアラビア服のトービを着た大男が次から次へと来てうしろから書類を出し、すわっている男はバン!とはんこを押す。順番も何もありゃあしない。中に入っていく。ナチの収容所に入っていくような気分だ。血液検査をする。注射針をひとり毎に変えているかどうかわからないという話を聞いていたので、大丈夫かと看護婦に念押しをする。ちゃんと変えている。小便を採り、あとは検便だというので、あした持ってくることにして、病院は終わる。事務所を終えて、近くのスーパーマーケットで水を買う。ファーストフードのレストラン街が中にあって、「はるばるとようこそ」と日本語の垂れ幕がかかっていてびっくりするが、食べ物はまずそうで全然ほっとしない。店内はきらびやかだが、照明が茶色っぽくて重苦しい感じがする。家で履く、スリッパがわりのサンダルを物色する。サウジ人は親指がすっぽり通る穴のついたサンダルをはいていて、これが一番種類が多い。ふつうの鼻緒のサンダルをさがし、イタリア製の650リアル(19500円)もするのを買ってしまう。ふたつ買ったつもりがひとつだけで、全然話ができていない。高いということもちゃんと承知で買ったとも言えず、茫然自失状態の買い物だ。
翌朝、検便を病院に出して、日本人会の登録にいく。日本人会の事務局は日本人学校の中の一部屋を使っていて、つぼはこの学校にくるのだと中を眺め回す。受付を駐在員の奥さんがボランティアでやっている。半年後に子どもが来ますというと、日本人学校は人数が少ないので大歓迎だという。彼女はサウジに来てダイビングにはまっており、サウジ大好きだという。こちらで出産した人もいますという。又聞きでない、生の、サウジを肯定する言葉が聞けてずいぶん安心させられた。