翌10月8日、航空便で送った荷物がもう着いて欲しい。モハメッドが自分で通関した方が早いというので彼につきそってもらって飛行場のカスタムへ行く。カスタムはこの間降りた旅客を左手に見て右の方にある。入り口でモハメッドが口をきいてくれてきのうのパスポートのコピーを出して代わりに通行証のようなものをくれる。ここから先は本人だけだとモハメッドが言う。えー! やってられないがままよと中に進む。小柄な第3国人が寄ってきて面倒をみるような事をいうのでそれに従う。ある窓口でパスポートを見せろというので、入り口で提出してるんだからある訳ないだろうと思いつつ、無いという。通関は第3国人のいわれるままにあっちへ行ったりこっちへ行ったり、窓口で書類を出してはサインをもらって次の窓口への繰り返しで計20カ所は回ったろうか、それぞれの意味のわかるわけもなく、付いて回るだけだ。途中建屋の真ん中付近の通路にベンチが置いてあって、ここで待ってろという。奥が荷物置き場のようでフォークリフトが荷物を次々運んでいる。お前はどこから来たのだと3国人に聞く。バングラデシュと答える。ふーん!「それはいい」といっちょ前ぶって言う。通路付近は荷物待ちの白いトービを着たサウジ人がいっぱいで、まさにサウジそのものだ。日本の女の子なんかこれを見たら気絶してしまうのじゃないかと思うほどの奇観である。荷物が出てくる。これだこれだ。入り口の方へ少し戻って御開帳だ。さあ、スーツケースの鍵はどこだ? 案の定、無い。そんなことだろうとあきらめは早い。20年も前のスーツケースで惜しくもないという気持ちもあって「こじあけろ」と言う。ほんとにいいのかと言うような顔をして、運搬者がバールでこじ開ける。着るものばかりであやしいものなんかないよ、そういじくるなと我慢してみている。一人西洋人がやはり調べを受けている。二人ともこの暑いのにスーツを着ていて、ひどいなあと顔を見合わせる。取り調べがひどいというのと、暑いなあというのの両方の意味だ。スーツケースが終わって今度は段ボールだ。英語の辞書と参考書と固いものばかりだというのに、バングラデシュの兄ちゃんは数冊を持って2階の部屋へ行く。おー! 検閲をやっている。ポルノまがいのページを破り捨てているではないか。すごいものを見せてもらえるなあ。我が持ち物も検閲を終わって、さあ終わりだ。台車に積んで外へ出て、出口の小屋でまたハンコ。バングラデシュの兄ちゃんが金をくれというので25リアルわたすと、安い安い、50リアルよこせとしつこい。25リアルというのはモハメッドに聞いていた相場だが、どちらが正しいか知らん。大体、これはチップなのか正当な報酬なのかもわからない。振り切って外へ出る。2時間かかった。運転手とモハメッドが待っている。ふー!という顔をするとそうだろうという顔を2人はする。荷物を車に積んで会社に戻る。