コンパウンド アラビアンホームズは飛行場からメディナロードを南下し、市街地に入ってすぐのところの西側、紅海側にある。日本人学校はアラビアンホームズから南に数kmのメディナロードとの間の住宅地にある。1975年頃は開発のピークで、JALの直行便が運行していた。このころの生徒数は200名くらいいたようだが、今は25名ほどになってしまっている。ジェッダの日本人は200名ほどで、ジェッダでは1万人にひとりだから日本人はほとんどいないのと同じだ。アラビアンホームズから日本人学校にむかう道の右側にプリンスの屋敷があり、ある日そこを通ると車がたくさん駐車していて、人が外に出て立っている。プリンスがこれからお金をばらまくのだそうだ。それをもらいに皆が車で来ていると同僚が言う。ほどこしをするのはイスラムの教えらしいが、そんなのインチキだよと思う。ジェッダの交差点はラウンドアバウトと言って、交差点中央が円形の丘状になっており、車は丘を左回りに走りながら、目的の道路へくると右折してラウンドアバウトを出る仕組みで、信号がないという点で合理的である。丘にはいろいろなモニュメントが設置されているが、アラビアンホームズを出て、日本人学校へ右折するところのラウンドアバウトには大きな、シンドバッドが乗っていたような船がある。題材としては牧歌的でいいのだが、作りが大味で、美的センスとしては日本の風呂屋の富士山のペンキ絵をもっとえげつなくしたようなものだ。
運転手は、幹線道路をはずれた市街地の十字路では、必ず最徐行する。車の飛び出しを恐れてのことだが、ここの連中は十字路では必ずストレートに通り抜けるのか、すごいところだと思う。街路灯の数は10m間隔くらいで設置されており大変多い。ナトリウム灯なので、茶色っぽくてどうも憂鬱である。夜メディナロードを走っていると、おびただしい車の数と、その早いスピードと、道路脇に次々と現れる大小の看板でめくるめく思いで、月に住んだらこんな感じかと思う。女性は皆、アバヤという黒いマントを着て、黒いスカーフをしており、目しか出していない人も多いので、化粧品の看板が多いことが不思議に感じられる。 お店のショーウィンドーにはシンデレラが着るウェディングドレスのような、しかし古くさい服がどこの店にも飾ってあり、家の中ではこんな格好をしているのかなあと想像する。