翌日曜日、いつものイタリアンレストランで夕食後、めがねを置き忘れる。
翌20日、代理店のセールスマネージャーにアブハという、南の高地にある町につれていってもらう。彼はイエメン出身のサウジに帰化した男で、前日、アブハは寒いぞと言ってくれた。初対面以来、彼は表情を変えない男で苦手だなあという感じをもっていたが、このことで彼を見直す。いつもの白いトービでなく、冬用のねずみ色のトービを着ている。冬用があるんだ。夏用はポリエスエル、冬用はウールだと言う。アブハの飛行場でレンタカーを借り、客の代理店に行く。出迎えたオーナーと「お〜! よく来た」という感じで抱き合い、親父さんは元気か? お袋さんは元気か? 息子はどうだ? その後変わりはないか? 仕事の調子はどうだ? という感じの挨拶をかわしている。まるで芝居を見るようで、これがサウジの、人のつきあいを大事にする流儀なのだなあ。
ひるめしに行く。トラディショナルな羊の丸焼きを食うかというので、トライすると答える。チャーハン風の、米をふかした上に羊が乗っていて、手でむしって食べる。塩をかけて食う。まずくはない。しかし飲み物がペプシコーラなのには閉口する。食事を終わり、彼が2泊するホテルに入って昼寝をし、夕方、支店を2軒訪問する。2軒目で夕方のお祈りの時間になる。彼はふだんはお祈りをしないのだが、皆といっしょにお祈りをしている。飛行場に送ってもらいジェッダに帰る。
翌21日、事務所に行くと、きのうモハメッドは出勤時にポリスにつかまって牢屋に入っていたそうだ。彼の話では、牢屋は狭く、数m角の部屋に、立っているしかない程の人が詰め込まれているそうだ。牢屋の公衆電話は壊れていて外への連絡は出来ず、同部屋の囚人を迎えに来た人に、モハメッドが牢屋にいる旨を彼の兄に連絡してくれるようメモを渡して頼んで、夜11時に釈放されたそうだ。
今日はコンパウンドの新しい部屋の契約をする。契約書にスポンサーのサインをもらい、銀行で金をおろし、コンパウンドのマネージャーの所に行く。1年分の500万円相当の現金を抱えての調印である。マネージャーは現金をキャッシャーに持っていく。このまま持ち逃げされたらどうしよう、付いて行くべきだったと5分ほどの待ち時間が長い。無事契約を終わり、イタリアンレストランにいくと、おとといの眼鏡はあった。サウジは全部が無法地帯ということでもなさそうだ。