「日本人学校はあるか?」「ある」 第1関門通過。

「80のばあさん連れてけるか?」「う〜ん」「しっかりはしてる。好奇心もある」「大丈夫かもしれないな」

もうひとつ、「犬は連れてけるか?」「う〜ん!!」

彼は台湾に飼い犬を連れて行った強者である。「おれも台湾へ連れてくる時、いろいろいわれたよ。サウジはわからないが、やってみることだ」 おお! さすが我が同期。やってみよう。

とにかくいてもたってもいられない。「サウジ大使館にいってくる」

東京駅でおりると雨だ。地下鉄に乗り、六本木までいく。おまわりさんに道を聞いてたどりつく。「犬を連れていけるか聞きたいんですが」「それは領事部だ。3時で終わりだ。でも連れてけないんじゃない?」「お前に聞いてんじゃない」と心の中でいう。

サウジは暦が違うからと資料をくれる。きょうは仕方がない、出直しだと駅に向かい、途中の喫茶店で、もらった資料を読む。日本人のイスラム教徒の修行日記みたいなのが載っていて「今日もアラーのおかげでありがたい」というようなことが書いてあるが、なぐさめにならない。帰るしかない。


家に着く。「サウジにいく」「え〜! いやだ〜!」と妻。「つぼ君いかな〜い!」とばか息子。ばかものめ。いくに決まってる。富士山に登らぬバカ、単身赴任をするバカだ。しかしばあさんはどうする? 犬はどうなる? 家はどうなる? 人に貸すのはいやだし、山のような引っ越しの仕事がひかえている。唯一、仕事が英語だというのを慰めに、あるいはごまかしに寝るが、会社をやめることとの間で一晩中夢をみている。


翌日、すくんでしまって犬のことをフォローせず、「犬が問題だ。いけなかったら会社をやめるしかないが、そうすると犬で会社をやめたということになる。あまり聞かないなあ」と 誰彼となく話す。

家に帰る。「留守番するよ」とばあさん。「うるさい。目のみえないばあさん置いとけるか。」

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