所長は間もなく帰国されるとのこと。嬉しいですか?と奥様に聞く。嬉しいですよねえ、日本にはいい物がいっぱいある。「うちのスタッフ飛ばすでしょ」と所長。「飛ばします。弥次喜多道中で大変です」「途中で連絡すればいいのにしょうがないやつだ」そんなに言わないでと奥様がたしなめるが、しょうがないはかわいいの同義語である。飛行場で出迎えが遅れたのは飛行機が早く着いたからだと言っていたとの事である。これが言い訳か、ほんとか、時計を持ってないのでわからない。しかし今回で気力充実、自信つきましたと朝早く起きなかったことは棚にあげて話をまとめた。
翌日はダマスカス市内で仕事。夜最後の晩めし。彼らのアレンジがよくわからず、出迎えに商社のスタッフがいてほっとする。セールスが誰か連れている。マイフレンドだという。女の子を連れてくるのならともかくこのバカモノが。店はアルコールがない。なにか飲めと彼らは何度も言うが、甘いものなんか飲めるかと何も飲まなかった。
スタッフの話は面白い。なにせ彼はアメリカミシガン大学の電気を出ているインテリだ。公害の話。外からダマスカスに帰ってくると町がスモッグで煙っているそうだ。ダイアナ妃の話。彼女は美人ではないが、最もチャーミングな女性だと言う。サウジの話。彼の両親はジェッダに住んでいて、サウジに来ないかと言われているが、汚いシリアのほうがいい、だから行かないと言う。明日はジェッダだ、いやだなあ!と言う顔をするわたしを見て笑っている。見ると、セールスの友人はしっかりした顔つきでみなの話を聞いていた。
翌日朝、飛行場に行く。X線で軍服の女性兵士が任についている。顔立ちが西洋の彫りの深い顔でかっこいい。女性の制服姿というのは魅力がある。エアポートタックスを買い、イミグレーションで入国カードは?と聞かれる。出国するのに何が入国カードだと息巻くと、オフィサーはわからん奴だと肩をすくめる。あれか!と入国の時書いたピンクの入国カードを雑誌に挟んでおいたのを思い出した。しかし捨てなくてよかった。別のオフィサーが「日本のパスポートを見るのは初めてだ、ウェルカム!」と言う。
ダマスカスを飛び立ち、メディナにワンストップ。乗客はみな一旦飛行機をおりてしまうが、めんどくさいので機内に留まる。スチュワーデスも暇でリラックスしてるので、また犬を乗せる方法を聞く。やはりケージに入れて予約をしてと同じ答えだ。2時間もして出発。