翌水曜日。サウジ大使館に電話する。女の人が出る。「宗教的な理由で歓迎されないが、毎年何件か申請がある。手続きは獣医の狂犬病予防注射の証明と健康であることの証明をサウジ大使館で割り印を押す」と口頭なので要領を得ないが、とにかく実績があることは確認できた。よし行けるぞ。
夜、妻の妹が伊勢から電話してくる。「サウジ〜! 戦争やってんじゃないの?」「大丈夫大丈夫!」
わたしの姉も電話で、おばあさんの留守番大丈夫という。ということで、会社をやめる話はおしまい、いくことに決定。
カン太。1995年2月23日小田原生まれのゴールデンリトリーバー。近所にしんちゃんという大きなゴールデンがいて、いいねえと思っていたので、近所のブリーダーさんでゴールデンが生まれたというので買って4月1日に家にきた。アメリカにいくことはもうないし、一人息子のつぼももう7歳でかわいがれるだろうと飼うことにした。カン太という名前はつぼがフィーリングでつけた。わたしの祖父が「静寛」という名前だったのでそれをとって「寛太」を正式な名ということにしたが立派すぎて、その愛嬌と立ち居振る舞いのかわいらしさに字のイメージが合わず、使わなくなってしまった。「カンタ」も「かんた」も違う、「カン太」が定着した。やさしく呼ぶときは「かんちゃん」である。家にきてから皆に、でっかい足してるから大きくなるわ!と言われつつめきめき大きくなり、7月に飾り毛が出始めたところにサウジ行きが降ってわいた。
「家族の一員ですからね、連れてってくださいね」と妻がいう。
行けることだけはわかったが、実際のひとつひとつの手続きはまだ漠としてわからないことだらけだ。大体ゴールデンは寒いところの犬なのにサウジの暑さは大丈夫だろうか、餌は売ってるのだろうか、病院は? 散歩は? コンパウンドという外国人の集合住宅のようなところに住むのだが、外には出られないという。散歩は充分にできるのだろうか? 花に水が、妻に愛が必要なように、犬には散歩が必要だ。