さて搭乗の時間が来たが、カン太の書類が戻ってこない。大変だ。どうなってるんだと職員に詰め寄る。大丈夫だ、先に飛行機に乗っていろというので、中に入るが、書類は来ない。オリジナルを渡すのでなかったと悔やみ、座ってられないので飛行機を出て待合いに戻り、どうなってるんだと再び詰め寄る。「俺はマネージャーだ、俺がいいと言わなければ出発はしない、ドントウォリー」と彼は言う。そうかと思いつつも、今度は本当にマネージャーかと疑い、きりがない。最悪はコピーを使ってジェッダで交渉だと腹を決め、尚もマネージャーにつきまとう。マネージャーはあちこちに電話をしているが、埒が開かない。とこうしていると、別の職員が書類を持ってきた。何をしていたんだとマネージャーは職員を怒る。間一髪間にあったが、寿命が縮まるよ。
また8時間の飛行が始まる。寝るしかない。途中リヤドに1ストップ。乗客はほとんどリヤドで降りてしまい、ファーストクラスはガラガラである。長い長い道中だがここまで来ればあと一息だ。かんちゃん、我慢ついでだ。最後のフライト、妻子はぐったりと寝ている。遠くに町の明かりが見えた。もうすぐだ。機内の電気が点く。ジェッダの夜景がだんだん大きくなる。アナウンスが撮ってはいけないと言わなかったので、ビデオを撮る。いつもの通り北から入って、ジェッダ南でUターンして、5分ほどで着陸。午前2時46分。着いた。行列がいやなので一番にドアに行くと待てと言われる。エコノミーの客から先に下ろすのだ。何かと思えば、着いたターミナルがハッジ客用のターミナル、ハッジターミナルだ。ハッジというのはイスラム暦の12月で、イスラム教徒は一生に一度メッカに巡礼をするのだが、その巡礼をする月のこと。この時はまだハッジ月になっていないが、巡礼はハッジ月でなくてもよいので、イスラム教徒のタイ人が巡礼に来たということだ。去年9月に入国したとき、タオルを巻いている人たちがいたが、あれも巡礼の衣装だったとわかる。ハッジ客が降りてからまた機体はのろのろと動いてインターナショナルターミナルへ着く。床の低いバスに乗る。飛行機の後部からカン太が出てくるのが見える。ビデオを撮るが暗くてうまく撮れない。