ターミナルのビルに着いてイミグレーションに向かう。先頭には並べなかったが、10人ほどの行列で大したことはない。パスポートを3冊窓口に出す。オフィサーの手続きがすこし手間取ってる風なので、大丈夫?と妻が言う。何度もやっている、大丈夫だとうなずく。手続きを終わりカスタムへ。いつもの様に荷物運びが寄ってくるが、それどころではない、カン太はどこだ。あっちだと荷物運びが教えてくれる。右方50mほどのところにエレベーターがあって、そこに行くとケージが出て来た。カン太だ。妻とつぼがケージをのぞき込む。カン太はおとなしくしている。まだ外には出せないがもうすぐなので人間も気持ちは落ちついている。荷物検査に行く。バッグを開けて、これはパソコン、これはソフトと説明する。あやしいものなどありはしない。さあ、いよいよクライマックスだ。ケージを検査台に乗せ、書類を渡して「犬だ」という。書類を受け取った係官の、どうしてよいかわからないけげんな様子がうかがわれる。さんざん調べてここまで来たのだ、わからなければ教えてやるぞと胸をはる。係官は書類を持って事務所にお伺いを立てに行くが、すぐ戻って来た。行けという。通過だ。書類も何もせずに戻ってくる。何だ、最初から何も無くてもよかったのじゃないか?
荷物運びに手伝ってもらって、出口へ向かって台車を押していく。他の係員がミャーオと言う。猫じゃない。
最後の心配、アラビアンホームズのリムジンが来ているだろうか? 自動ドアを出る。運転手をめざとく探す。見つからない。次の瞬間、出向かい人の最後の方に運転手がいた。やった。車寄せまで行き、リムジンがくるのを待って、トランクに乗せる。終ったのがうれしくて、みなで分けろと50リアルも荷物運びにわたす。
アラビアンホームズに着く。中に入って家のそばのゲートまで進む。塀の上の飾りのランプが深夜なので消えている。午前4時。ケージを下ろし、カン太を外に出す。かんちゃん偉いね、良くがんばったね。ウンチはしていない。オシッコだけだ。
気がつくと、ケージに巻き付けておいた予備のリードがない。こそ泥の国だ。