21.ブラームスの交響曲

ベートーベンを聴き込んでいった高校の頃、兄が持っていた弦楽四重奏曲ラズモフスキー3番(ブダペスト四重奏団)をかけてみたことがあります。冒頭、がーという音が何度かして、次にバイオリンがぎくしゃくした旋律を奏でるのですが、何と苦い音楽だと思いました。とても飲めない濃いお茶のようです。この頃、当然ブラームスの交響曲がラジオから耳に入っていたはずですが、ベートーベンの交響曲と比べると、旋律のわかりにくさもさることながら、音自体が苦いお茶のようで、当時はまだ酒も飲まず、まずくて飲めませんでした。要するにわかりませんでした。唯一わかりやすかったのはバイオリン協奏曲で、メニューインーフルトヴェングラーのレコードを買いましたが、メニューインが若すぎてつまらないのか、フルトヴェングラーがスタジオ録音のせいでつまらないのか、このレコードはあまりよくありません。その後更に聴き進んでオペラとワーグナーに開眼し、オペラ以外ではチェロ協奏曲(ドボルザーク)と悲愴(チャイコフスキー)が好きだと自分の世界が出来上がった1967年頃、ようやくブラームスの音が耳に入り始めました。それでも最初に好きになったのは3番と、一番渋い、苦い曲から取っついたものです。4番は一番音が苦くない曲で、これは続いてマスターしましたが、この頃、2番はお粗末な曲だなと思っていたものです。空白の10年を経過して、BS放送を聴き始めたころ、1番が放送されて、うわーいい!と思い、カラヤンのレコードを買い、テープに録音して、妻がそうじ機をかけながら聴く曲になりました。ジェッダ時代もカラヤンのCDを買い(多分別演奏)、環境を維持しましたが、2番が一番いいと思ったのが10年くらい前のことで、ここ2〜3年は、やはり1番がいちばんいいと思っています。世の中は段々変化(進化?)しますから、人々の好みも変化し、戦前〜40年前くらいまではモーツァルト、ベートーベンの時代ですが、40年前からワーグナーが理解され始め、当然の流れとしてマーラー、ブルックナーがよく演奏され始めて現在に至っているわけですが、ブラームスの交響曲は現在、多分一番演奏や放送される回数が多いと思います。その良さはチャイコフスキーの悲愴の気持ちよさと同じですが、音は全然違います。一曲一曲の音(和音、音色)も違っていて、味と色にたとえると、2番は新緑の緑とおいしい緑茶の味で、これが2番が一番いいと思っていた理由です。1番はベートーベンのラズモフスキー並の苦さで、さんまの肝がおいしいようにおいしい。3番は今思うとこれが苦かったのかと思うくらい甘い音ですが、最初にいいと思ったわりには、今ではそれほどよくはありません。4番は一番透明な音で、ベートーベン並。それに加えて鬱屈したブラームスの性格が少しづつずれたリズムを刻んで、得も言われぬ曲です。このように、時間とともに好きな曲が変わるのですが、現在は40年前わからなかったベートーベンの弦楽四重奏曲も毎週のように聴いています。ブラームスはまじめで、ベートーベンを尊敬した結果4曲しか交響曲を作りませんでしたが、4者4様の批評をしてみました。                                                        2010.2.1

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