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2.発声について

合唱の練習を始めて最初にびっくりしたことは、皆が上手で「うわ〜いい!」と思ったことです。「レコードで聴くとおりだ」 みたいな感じで、ほんとはレコードよりいいのですが、生の演奏を聴いたことは少ないのでそう思うわけです。合唱というのはかなりの大人数が声を合わせるわけですから、声が合ったときの喜びが、同じものを見て心が通じる喜びと同じわけです。映画サウンドオブミュージックで、トラップファミリーが歌うエーデルワイスに聴衆が合わせて歌い出す所や、フランス国歌ラ・マルセイエーズが歌われた状況というのは(これは想像ですが多分)感動的です。

始めに教えられたのが腹式呼吸で、「最初に吸いこんだ息で横隔膜が下がる(おなかに空気がたまる)。声を出すにつれて横隔膜が上がって(空気が出て行く)、息を吐き切ったとき、おなかをふくらませることで瞬時に空気がおなかに再び入る。胸式呼吸だと息を吐き切ったあと、息を吸わねばならないが時間がかかるので音が続かない。」ということです。しかし合唱指導の指揮者には「体で覚えよう」と言われました。

次に発音ですが、「あ〜」や「た〜」という音は「あa〜」「たa〜」と冒頭の音をはっきり発音し、その後母音を響かせると歌詞がよく聴き取れるということです。これを有声化すると言います。3〜4年前のテレビで、小沢征爾が歌手に教えていて、「指揮棒を見なさい。今だ!と合図をしているから。オーケストラより一瞬早く声を出すと、言葉が良く聞こえる。プラシド・ドミンゴは指揮棒をちらっと見るのが上手だった」と言っていましたが、これと似ています(全く同じことかどうかはわかりませんが)。

次に発声ですが、喉から前方に声を出さずに後頭部を通って上に抜いて前方に出すと言われました。「後頭部への空気の通りを意識して!」と先生は何度も何度も手を耳の横を上に上げて、更に頭の上から前に出す動作をしていました。後頭部に空気が通るのか?と不思議でしたが、軟口蓋鼻音といわれるもので、鼻に抜く発音です。「がぎぐげご」ではなく、無理に「か゜き゜く゜け゜こ゜」と表記することがあるそうで、助詞の「〜が」は全て鼻濁音「か゜」ということです。  そのように発声する方法として、「ほお骨から上で歌う」と教えてもらいました。そういえば西洋音楽は皆ほお骨から上で歌っています。日本の歌謡曲は「あ〜川の流れのように〜」と喉で歌っています。唯一の例外は「千の風に乗って」ですが、この発声が日本人にはキザだとか気取っていると聞こえるのだと思います。そしてこれが日本で西洋音楽(クラシック)が好かれない理由のひとつだと思います。「千の風に乗って」がいいのならば、もっといい曲はクラシックにはいくらでもある。1987年頃、NHKの「第九を歌おう」を指揮していた井上道義が、本番を終わって自ら感動した表情で、「おこがましいけど、クラシックにはいい曲がいっぱいあります。もっと聴いて欲しい」と言っていました。そのとおりで、残念なことです。                                                                 2010.3.11